NHK 「プロフェッショナル 仕事の流儀」
茂木健一郎の「超一流の仕事脳」
達人は「習熟」を自ら否定する
~文化財修理技術者 鈴木裕~
茂木さん曰く、
「どんなに目立つスタンドプレーの仕事の背後にも、必ずそれを支える無名の仕事があるはずだ。特に生命や組織などの有機体を維持するにはいろんなルーチンワークがある。
我々の体にしても、ほとんどのところは無名というか、脳みたいにオレが意識を作っているなんて言わないで、無名に我々の体の働きを支えてくれている働きがいっぱいある。無名性というのは、組織が有機体として維持されていくために絶対に必要なことだと思う。
無名のものに報いるというか、少なくとも感謝の気持ちを持つことが、組織を続けていくためには大事なことだと思う。愛と感謝じゃないけれど、僕は無名性こそが継続、持続の礎なんだと改めて思った。
そういう意味でいうと、スタンドプレーや目立つことばかり評価される成果主義というのは有機体としての組織にはなじまない面があるのではないか。特に、継続性とか持続性を考えたときに、無名性をちゃんと評価しないと絶対にもたない。それは分かっている人は分かっている。」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20071129/141850/?P=1
感想
成果主義も企業によってまちまちだが、導入した企業の多くは個人の業績と報酬をリンクさせるやりかたをとっている。 報酬(主に成果給やインセンティブ)とは結局、その年の利益を原資として、各人の業績に応じて、相対的に配分される仕組みになっているので、組織内のsocial interdependence(社会的相互依存性:注1)は当然のごとく、competition(競争)またはnegative interdependence (ネガティブな社会的相互依存性)にならざるを得ない。 competitive social interdependence(競争的社会相互依存性)とは、自分が多く報酬を獲得するためには、他者が少なくもらう、つまり犠牲になる必要があることを意味する。 このような状況におかれると誰しも相手が組織の中で目立たない、つまり、「無名」でいることを望むようになるのである。 このような報酬体系・システムの中では、自分が目立つこと、そして相手が無名化していくことの両方を追求するようになる。 ここには基本思想として、お互いの違いを認め、協力しながらシナジーを引き出していくといったような考え方は存在しにくい。 成果主義(Pay for Performance)には、こんな文化的特性があるのだということを人事をやる人間は肝に銘じておく必要があるのではなかろうか。
注1: social interdependence(社会的相互依存性)とは各個人の成果(outcome)が、他者の行動によって影響を受けるとき、存在する(Deutsch, 1949; Johnson & Johnson, 1989)。 社会的相互依存性はポジティブ、ネガティブの何れにもなり得る。 positive interdependence (cooperation) (ポジティブな相互依存性(協力、協働))は、各個人が共通のゴール・目標を目指して、協働する場合に存在する。逆に、negative interdependence (competition) (ネガティブな相互依存性(競争))は、各個人が、一人もしくは僅かな人しか達成できないゴールを目指して、お互いに足の引っ張り合いをする(work against each other)ときに存在する。(Johnson & Johnson, 2002)
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